教員紹介

助 教 佐古田 幸美 Yukimi Sakoda 大学院医学系研究科(医学)

研究紹介

免疫学的手法を用いた新たな治療法の開発を目指して

私は臨床医として白血病やリンパ腫など血液がんの患者さんに関わってきました。骨髄移植は抗がん剤の効かない血液がんに対しても根治の可能性のある素晴らしい治療法ですが、一方で移植片対宿主病(GVHD)と呼ばれる症状を引き起こすことがあります。GVHDは移植した骨髄が患者さんの体を異物として認識し攻撃してしまう病気で、致命的な症状につながることがあり、効果的な予防法や治療法は確立されていません。骨髄移植で生存できても、強いGVHDにより日常生活に不自由する患者さんが沢山います。私は上手くGVHDを制御し患者さんの負担を軽くしたい、という思いから大学院でGVHDの病態を解明するための研究を行いました。骨髄移植がなぜがんに効くのか、そして骨髄移植がなぜGVHDという副作用をもたらすのか、そのベースになるのがからだのもつ「免疫」という非常に巧妙で複雑なシステムです。

免疫システムは時と場合に応じて私たちに都合良く作用することもあれば悪く働くこともあります。そのような免疫機能の方向性を決定する因子の中で、近年特に注目されているのが「共シグナル分子」です。この分子の働きを阻害あるいは刺激することで、免疫機能の一部をコントロールし、がんなど様々な疾患に対する治療ができることがわかってきたのです。私が着目したHVEMという分子は、共シグナル分子の中でもめずらしく複数のリガンド(=共シグナル分子を刺激する分子)を有するユニークな分子で、未だその機能の全ては解明されていません。

研究によりHVEMに対する抗体はGVHDやがんなど様々な疾患に効果があることがわかってきました。共シグナル分子に対する抗体は、よく使われる免疫抑制剤(免疫機能の全体を抑える薬)とは異なり、目的とする免疫機能の一部のみを抑制するという特徴があるため副作用が少ないことが期待できます。

現在、ヒトの免疫機能を利用したこの「抗体療法」「抗体医薬」は世界的にも成長している医薬開発分野で、世界の製薬会社が新技術開発にしのぎを削る一方、経産省による新拠点計画が進行中であるなど、非常に将来が期待されています。私は今後もさまざまな疾患における共シグナル分子の役割を解明するとともに、それに対する抗体を新たに作成し、よりその病態に応じた、そして副作用の少ない治療法を開発することを目指していきたいと思っています。

佐古田助教の略歴

2007年3月 岡山大学大学院医歯学総合研究科博士課程修了 博士(医学)
2007年4月 岡山大学病院血液腫瘍呼吸器内科 医員
2007年9月 米国メリーランド州立大学がんセンター 博士研究員
2012年2月 山口大学大学院医学系研究科(医学)応用医工学系学域 助教(テニュアトラック)